Judith Egger / Manuel Eitner
共鳴の部屋 / Chamber of Resonance
2012年9月1日(土)―9月16日(日)
土 sat, 日 sun, 祝 holiday,:11:00 - 18:00
週日 weekdayは予約制 by appointment:090-7384-8169
ユディト・エッガーとマヌエル・アイトナーはミュンヘン在住のアーティスト、8月7日に来日しOperation Table/QMACにて滞在制作を行いました。
9月で3歳になるという娘Romyちゃんを伴った3人にとって初めて訪れた日本での滞在は、東京も京都もすっ飛ばして北九州ー福岡のみでしたが、地元のアーティストに会ったり、近くのアートスペースを訪れたり、作品の素材を探してまわったり、ギャラリーをスタジオとして使用、制作に没頭し、あっというまに3週間が過ぎ、展覧会オープンを迎えました。
エッガーはパフォーマンスが主要な表現手段ですが、ゴム素材が空間内に蔓延り、手術台と呼応する驚異的なインスタレーションを制作しました。アイトナーは時代物の映画ポスターや新聞の写真を使ったコラージュ・ドローイングによって、一見かけ離れたイメージの共存を新しい意味に転化させます。これまで2名が同じ空間で作品を発表することはほとんどなく、作品の傾向も全く異なるものでしたが、Operation Tableの空間ではみごとに共鳴していました。エッガーの輪ゴムをつないで手術台を取り囲んで出来上がったインスタレーションは、床の排水口から侵入した奇妙なモンスター、一方、日本の印象をもっぱら3.11の自然災害と原発事故の重大さで捉えるアイトナーのコラージュにもいたるところに、自然の脅威と人間の仕業から産み出された怪物が潜んでいました。
☆千代福でのパフォーマンス
2012年8月25日、エッガーとアイトナーの2名は久留米市のアートスペース千代福で開催された 「千代福十周年記念夏祭り」に参加。
エッガーはパフォーマンスを上演、アイトナーはスライド・ショウを上映しました。
☆津田三朗 エッセィ
「千代福十周年夏祭り」にて、エッガー/アイトナーのトーク通訳をつとめてくださった津田三朗さん(九州大学芸術工学部)に 「共鳴の部屋」エッセイを寄せていただきました。
Judith Egger ー「uterus」空間の虫ー
その奇矯な形の生き物は、排水溝から這いだしゆっくりと伸びをするように無影灯に張り付き、手術台の上へと引き寄せようとしていた。同時に傍らのイスをも取り込み、まるでその部屋の中心で、空間そのものを内部へと裏替えそうとしているかのようだった。
内部と外部、双方に緊張した関係を紡いでいるのは輪ゴムと輪ゴム、そして輪ゴム。
幾重にも重なり連なり結ばれ、皮膚のようなゴムの外膜を引きちぎり、突き破って増殖し続ける。強い力で重たい手術台やイスだけではなく観客さえも巻き取り、引き寄せる絶対的な存在でありながら、出来の悪い放蕩息子のように、あてのない欲望を持てあましているようにも見える。
そんなオブジェを産みだしたのは、作家自身を飲み込むような一部屋ほどのuterus(子宮)であり、彼女はその中で、持ち前のユーモアと論理性をかぎ針としてし巣喰う虫のようにゴムを編み上げたのだ。内部でありながら外部である彼女の肉体を含め、二重三重の入れ子のuterusを通じて、逃れようとするもの、生まれようとするものと留まろうとするものの拮抗を感じたのは、僕がその身に内部を宿すことのない男性だからなのだろうか。僕は、行為そのものの代償としての産物、行く当てのないその生き物に奇妙な親近感を持った。
「さぁどこへ行こうか、僕も分からないんだ。」
Manuel Eitner ー壁に貼られた「地図」ー
絵画と呼ぶには、恐ろしいほどに近すぎる。
映画雑誌のグラビアで微笑み、目を見張り、遠く視線を投げ掛けるヒロインやヒーローは、部屋の片隅や本棚、机の上、引き出しの中、ノートの裏表紙、はがれたポスターの合間に現れ、引きちぎられ、幾重にも畳まれてポケットの中にしまい込まれる。彼によって刻まれた映画は、 そんなヒロインやヒーローのように、 壁の額縁から抜けだし、見ているものの中に入り込み、密かにすり替わるのだった。
つかの間、登場人物と成りすまし人生を生きる。
壁に貼られた作品は、あたかも地図。 その座標には、スチール写真の中のスクリーン、幾重にも重なる映画の物語が転々と描かれている。コラージュとは、異なったイメージを寄せ集めてさらなる意味を加えるものだと思っていたが。彼は、意味を重ねるどころか、人形のように手足をもいで裸にしてしまう。その意味さえ留める必要がないとうち捨てて、 無邪気な子どものように 遊び続けている(そうだこれは、終わらない旅なのだ・・・)。
コンパスを開き、 あっけらかんと寓意を放り込んで、素早く行き先を書き込む。交差する経緯線で互いに結ばれた点が(切り抜かれた写真が)、軌跡のように道程を、幾重にも幾重にも重ねて行くと、てんでバラバラだったシーンが次第に、壮大な運命譚へとすり替わりってしまう。
そして不思議なことに、皆が、それらが自ら体験したことかのように思い込むのだ。
盗まれた人生の「地図」、それが、あなたの作品です。
津田 三朗
Judith Egger (1973 Germany / Bavaria)
1973 ドイツ、バヴァリアに生まれる
2001 Royal Colledge of Art (RCA) 修了
2005 Jungle Park (group show) Kunstraum München ミュンヘン
2006-07 EU-funded International arts project open-here artistic director
2010 壁画制作 University fur Bodenkultur (BOKU) ウィーン、オーストリア
2012 Wunderkammern / Landshut (2012.7.
ユディト・エッガー の作品の核心は時間と空間にある。自らを「アート寄生虫」とみなして様々な
空間や状況のなかへ侵入し, その与えられた空間に適合する作品を創り出す。インスタレーション、
オブジェ、パフォーマンス、 ドローイングやヴィデオを手がけ、また他の アーティストとのコラボ
レーションも行う。 精神的にも肉体的にも、「変成」が主題となる。一方では科学、物質や物性に
強い関心を抱くが、もう一方で非物質的なもの、精神性や我々の存在 を導く見えない力にも反応する。
作品においてはユーモアがかなりの本質的な要素となる。
At the core of Judith Egger´s work lies a strong interest in space and time.
She sees herself as an "artistic parasite" who adapts and absorbs any space and situation and creates an especially tailored piece for the given circumstances. Her artistic practice
includes installations, objects, performances, drawings and videos as well as collaboration with other artists.
Transformation - physical as well as spiritual - is one of her main themes. This leads on the one hand side to a strong interest in science, in matter and physicality - and on the
other hand in the non-physical counterpart; spirituality and the invisible powers directing our existence. In her work a certain amount of humour is essential.
http://www.judithegger.com/
写真左から:Abrieb / Auflösung / Mund_krippel / Störfall
White Unknown Entity
未知なる白き存在
1時間のあいだ、不定形の白い物体が、千代福1階のスタジオを取り囲んでいる欄干に沿って這い進んでいる。それは巨大なアメーバのようだが未だ見ぬ種である。この生き物は、この場所がもと醸造工場であった頃からの残滓微粒子を食いつないで生き延びてきた。
アーティスト、ユディト・エッガーは自然界の制御しがたい生命力を作品にとりこんで永く活動してきた。今回は迷入寄生虫の役にはまり込んだ。
In the course of an hour an amorphous white substance ? an unknown species resembling a giant amoeba ? will creep along the balustrade which surrounds the ground floor studio at Chiyufku. This entity lives off the tiny particles of Sake which have been left from the production of the former factory.
SInce many years, the artist Judith Egger deals in her work with the uncontrollable life force of nature. This time she will slip herself in the role of an erratic parasite.
千代福10周年記念夏祭りでのパフォーマンスです (18:37)
Judith Egger: White Unknown Entity at CHIYOFUKU, 2012
Manuel Eitner (1965 Germany / Munich)
1965 ドイツ、ミュンヘンに生まれる
装飾美術を学ぶ
1987 美術家として活動開始
1994 "Eros/Krelos" V oxxx Galerie, Chemnitz (solo show)
2001 "2115km; Aktuelle Kunst aus Bayern", Museum for Modern Art, Moskau, Russia
2009 "Du warst noch nie da", Sakamoto Contemporary, Berlin (solo show)
2010 "Love and Friendship in the Nuclear Age", Gelerie Dana Charkasi, Vienna, Austria
マヌエル・アイトナーは草創期の映画から着想を得る作品を発表してきた。 映像や報道資料、映画の
ポスターや映画館に貼られるスティル写真をコラージュしたもの、またそれらのスティル写真をキャン
バスにコラージュしパステルやオイルの彩色を加える作品である。 アメリカやヨーロッパ映画のよく知
られた典型的なシーンを採りあげるがコラー ジュすることで、それらのイメージを別のレベルの意味
に転換させる。古い新聞から切り抜いた写真を使って、もとの意味をひっくり返すもうひとつのSZシリ
ーズもある。
Manuel Eitner´s work is inspired by the world of films from an early stage on. He uses films, press material, cinema posters and photographs from the box office
as starting point for his collages. Also he takes film stills, transfers them onto canvas as realistically as possible and combines them with crude oil pastel drawings.
Adding and collaging is one of his main techniques to open up new levels of meaning behind the sometimes well known and archetypical stills from american or european movies
(examples see in PDF Collages-Portfolio). In another of his series (SZ Serie, see PDF SZ-Portfolio) he works with news paper cut outs from the daily newspaper.
Here he subverts the original meaning of the press photographs by just adding a few lines.
http://www.manuel-eitner.de/
左から:Durch schöner Land, 2011 / Gorkenant, 2010 / Der Kommandant, 2009