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遠賀川神話の芸術祭2024

会期 2024 11/9[土]⇒ 24[日]11:00~18:00
会場 さわらびガーデンモール八幡一番街 1F休憩スペース(JR八幡駅前)
   Operation Table (八幡東区東鉄町8-18)
   ※ Operation Table は金土日 11:00~18:00、月~木は前日までに要予約

遠賀川流域は大陸との位置関係が近く、歴史、産業、文化的に重要な場所でした。「遠賀川神話の芸術祭」は「やはたアートフォレスト〜パレットの様~」関連企画として継続し、東アジア文化都市2020-2021パートナーシップ事業「遠賀川神話の芸術祭2021」では、再度、遠賀川流域の本質や大地の力を検証し、地域固有の芸術表現を生み出しました。今回も北九州周辺地域のアーティストの交流の場としての展覧会「遠賀川神話の芸術祭2024」を開催します。

     
     

参加 Artists: 狩野信喜、亀川豊未、河村陽介、重松希、鈴木淳、田中奈津子、鶴留一彦+森秀、ナカムラタツヤ、 村田峰紀、服部夏子、福地英臣、安田尚平

2024年11月9日(土)16:00~
オープニングトーク+パーティー
Operation Table
参加料1,000円

2024年11月17日(日)15:00~
村田峰紀パフォーマンス
Operation Table
参加料2,000円
※パフォーマンスのみ観覧の場合は参加料1,000円




   
     


田中奈津子 Natsuko TANAKA



ガラスブロックの前に下がっているのは、染色した布にペイントした最新作"The Garden of Forgiveness #8"、壁にはその関連作3点(額装)がかかっています。
     
i. The Garden of Forgiveness #8 150 ×82 2024 Batik, Acrylic    ii. The Garden of Forgiveness #9 31×21 2024 Batik, Acrylic
iii. The Garden of Forgiveness #10 31×21 2024 Batik, Acrylic    iv. The Garden of Forgiveness #11 31×23 2024 Batik, Acrylic


福地英臣 Hideomi FUKUCHI



右壁面にマンガを題材にした「創造で、また、世界を変えて。」が吊り下がっています。
   
創造で、また、世界を変えて。 610×2300mm  2024 キャンパスとセルロイドシートに インクジェットプリント


鶴留一彦 + 森秀信 Kazuhiko TSURUDOME + Hidenobu MORI



左のガラスケースにてDVD作品「KANMON」をループ上映しています。
     
KANMON10 2023 DVD 10min., 31.5inchモニター


亀川豊未 Toyomi KAMEGAWA



正面の受付室に和紙ドローイング2点と樟+テラコッタンボオブジェが置かれています
   
i. 若い植物 和紙、鉛筆、木炭 2018   ii. 木漏れ日 和紙、木炭 2019   iii. 土の生き物 テラコッタ(野焼き) 2022   iv. 無題 オブジェあるいはディフューザー 樟 2023
北九州市立美術館カフェ・ミュゼでは亀川の個展開催中。12/8まで。Operation Table会場と合わせてお立ち寄りください。


服部夏子 Natsuko HATTORI



メインギャラリー 手術台x2、東+北タイル壁面 倉庫扉
北九州での展示は約10年ぶりの服部は、タイル壁と手術台の上に、縫いぐるみによるコラージュ作品を並べました。カフェ・ミュゼでも亀川豊未個展に続き服部夏子展が予定されています。(12.22~2025.2.24)
     
   
i. 麒麟 布、綿  ii. Overwrite 布、綿、アクリル絵具、スプレーペイント キャンバス  iii. First Shoes 靴、布、綿 2022~2024  iv. Awake 布、帯、着物、綿 2017 
v. Diary 布、綿、アクリル絵具   vi. Tart stone 布、綿、アクリル絵具、スプレーペイント、 キャンバス  vii. Mars stone 布、綿、アクリル絵具、スプレーペイント、 キャンバス 


ナカムラ タツヤ Tatsuya NAMAMURA



メインギャラリー倉庫+扉2面
メインギャラリーの倉庫を半分空っぽにして、最近発表を続けている、和紙に鉄錆や銅の緑錆で描いたドローイングの上に古い建物壁面のひび割れを撮った写真を貼った紙作品を展示し、薄暗い裸電球で照らしています。
     
      TRACE 2024(遠賀川の罅) 2024 紙、プリント、鉄、銅


重松 希 Nozomi SHIGEMATSU



メインギャラリー西側窓際+ニッチ+手術台
Operation Table初登場の重、メインギャラリーの西窓際とその隣りにある小さなニッチ、手術台1台にドローイングを背景にして、鉄のオブジェや魚のドローイングをおいています。
       
         

i. 製鐵所の風景 トレーシングペーパー、クレヨン 2023 
ii. 山 鉄 2023 
iii. いしがきだい 紙、クレヨン 2022 
iv. まとう 紙、クレヨン 2024 
v. まとうのお腹にいたさかな 紙、色鉛筆 2024 
vi. girlstalkabout 鉄、クレヨン 2024 
vii. 楽団員(たいこ) 鉄 2022 
viii. 山 鉄、クレヨン  2024 
viii..楽団員たち 鉄、クレパス 2024
ix.耕す 鉄 2017 



鈴木淳 Atsushi SUZUKI



メインギャラリー南側パネルx2+白い家用器具ケース+北側ニッチ
メインギャラリー南側壁面のパネル2枚と、その真ん中に置かれた白い医療器具ケース、東壁面の隅にあるニッチを使って "On the Bed"" Just One Tree"のおなじみのシリーズに、"fART(おなら)"という何やら匂いそうな新尻いずが加わりました。
       
 











i. On the Bed  木製パネル、アクリル絵具 2024
ii. Just One Tree  木製パネル、キャンバス、アクリル絵具 2024
iii.fART(おなら)  木製パネル、キャンバス、アクリル絵具 2024





狩野信喜 Nobuyoshi KANO



メインギャラリー北側パネル
版画作品を発表してきた狩野信喜は、最近取り組み始めた金属レリーフの作品をメインギャラリー東側パネルに掛けました。
大川清力美術館展のためのエスキース、”Departure 2024-10”です。
  Departure 2024-10  大川清力美術館展のためのエスキース  プロペラ、滑車、アルミニウム板 2024


河村陽介 Yosuke KAWAMURA



ベッドルーム全体を日常性そのままにして、下着を被った鉄腕アトム人形やAV系のポートレートを箱やシルクスクリーンのキャンバスにプリントしたりして、アンディ・ウォーホル紛いの猥雑な空間を演出しています。
      
      
 




i. ASTRO BOY  鉄腕アトムのぬいぐるみ ブリーフ H33×D20xW12 ㎝
ii. パンパンのパンツ  アクリルケース ブリーフ H10×W10 ㎝
iii.パンパンのパンだ  アクリルケース パンダのTシャツ D3xW8×H3 ㎝
iv.春を売る人  P50 キャンバス アクリル  116.7×80.3㎝
v. 少年時代   白ポスト 8x14 ㎝
vi. 小さなビニ本 4㎝×3㎝



安田尚平 Shohei YASUDA



バスルーム
ガラスでできた使い物にならないコンセントや、やはり思いがけないガラスでできた吸いかけのタバコがのった灰皿を潜ませているのは安田の仕業です。      
   
i.プラグとコンセント  ガラス 2022  ¥44,000   ii.プラグとコンセント  ガラス 2022  ¥44,000   iii.余韻  ガラス 2015  ¥55,000

遠賀川神話の芸術祭2024に寄せて

黒川智子

 「遠賀川神話」とはどんなものか、その芸術祭では何が行われるのか、その辺のことは全く知らず、ただ、久しぶりにoperation tableにうかがえることがうれしくて、11月9日のオープニングトークに駆け付けた。始まりの時間には間に合わなかったが、なんとかセーフ。すべての参加アーティストのお話が聞けたのは幸いだった。
 エントランスのバティックの布地は田中奈津子氏の作品。インドネシアと北九州市を往復して暮らす田中氏のトークで響いた言葉は「寛容」。宗教も言語も違う民族が共に生活している国ならではの寛容さ、その心地よさがインドネシアにはある、と。インドネシアは世界第4位の人口を誇る大国なのだが、懐も深い。彼女は以前、プリントされたバティックに描くという形で作品を作っていたが、今回の出品作は自ら植物模様をろうけつ染めで施したバティックにさらに墨絵のような色彩で絵を描き加えたもの。その説明を聞いておやっと思った。私はてっきり墨絵のような部分が地で、その上に植物の絵を描き加えたのだと勘違いしていた。下地と上描きの逆転が妙に面白かった。ろうけつ染めを理解していれば、こういう勘違いは生じないのだろうから、素人とは困ったものだとも言えるが、下が上に見える、上が下に見える、そこは寛容に楽しませていただいた。(編註1)
 同じくエントランスにあった福地英臣氏のキャンパスとセルロイドシートにインクジェットプリントを施した作品は、不思議な立体感を漂わせていた。ご本人が欠席で詳しい説明を聞けなかったのは残念。(編註2)
 森秀信氏と鶴留一彦氏による作品「KANMON」はモニターに映し出される動画なのだが、たとえば、中央の背中合わせに立った二人の男性はほとんど動かない。周りの旗が風に揺れていることで動画と分かるくらいだ。作品のわきに立ってその説明をしてくれたのは森氏。彼の説明が、この日、一番神話を感じさせた。まず、彼のそのたたずまいに驚く。口から流れる言葉に二度驚く。普通に見えた人がどんどん巨視的な視点を持つ巨人に変身していく。彼の言葉が、雲の上から細長い日本列島を見下ろす神々の言葉のように響く。モニターの中で揺れる旗。あれは高天原からの風に揺れているのだ。(申し訳ないが、私は俳句好き、それも奇妙な俳句が好きなせいで、人の言葉も勝手に解釈して面白がる癖がある。意味不明な部分は無視してください。)
 それにしても独自の観察で関門を点で包囲するように作品を制作する、その意図、思想は何なのだろうか。どんな構想でこの作品は作られ続けているのか、その全貌が、少なくともこれまでの足跡を知りたいと思い、トーク後の森氏にすでに制作された作品を見る方法はないのか、お尋ねしたが、どうやら、簡単には見られないようであった。もしかしたら、私は全く方向違いのとらえ方をして、失礼にも氏に「全身を裏返して見せてください」と言ってしまったのかもしれない。
 受付室に展示されているのは亀川豊未氏の和紙に木炭で描かれた絵画とテラコッタ、そして楠で作られたディフューザー。彼女は遠方からON LINEでのトークであったが、液晶画面からひょいと乗り出してきそうな話しぶり。特にディフューザーの素材を「木っ端」と表現するのが、私の耳には新鮮だった。コッパと言えば、コッパミジンだろうと思うのだが、彼女の言葉も作品も全く微塵に打ち砕くことなど考えていないものだった。それは塊であり、確かな量感を持ち存在をアピールするものだ。アーティストが何気に使う言葉に私は度々驚く。世界が違うと、言葉は全く違う意味を持つ。
 彼女の作品は全体に湿度があるように感じた。和紙に描かれた女の顔は平面のようで、ちょうど歌麿版画にある女の腕のように、何の線も色もない部分に湿度があり、よくよく見れば、白さの下に青い静脈や血の色までも見えてきそうな気がした。木っ端で作った作品にも人の皮膚のような湿り気が感じられた。
 普通、パーティーのための道具や椅子がしまわれているメインギャラリーわきの倉庫に広がっているのがナカムラタツヤ氏の作品だ。彼の作品はずいぶん昔から見てきている。彼なりに、大いに語りたい変遷はあると思うが、私は一途に突き詰めているアーティストの一人だと認識している。だから、新しい作品を見る時も、「…それから、どうなったの」と思い、あえて視野狭く作品と向き合う。メインのステージから外れる倉庫部分を展示スペースにするあたり、私の「視野狭く」という鑑賞の姿勢は間違ってないのではと思う。今回もまさに突き詰め途中の作品で、彼自ら「作品をジーッと眺めるのが好き」と語っていたが、作品のヒントの発見も制作も、その後の作品の変容までも、ジーッと見続けなければならない、結構、骨の折れる、でも魅力的な道中、その只中に氏は立っている。
 建物の外壁に入った罅(ひび)に注目し、その罅を写し、そこからさらに拡大、変容させて、あるいは、変容を見守る作業を彼はこの日、「トレース」と表現した。なるほど。この、追いかける、見続ける作品は、長い時間を経て、色になり、匂いになり、どんどん不穏にもなりそうだが、どこかで光を得るのだろうか。見続けたい。
 重松希氏の作品はメインギャラリー西側の窓際あたりに広がっている。トレーシングペーパーにクレヨンでうわーっと描いた、波打つ草の葉のような絵画が「製鐵所の風景」?どういう意味だろうかと怪しんだが、自身クレヨンのように立って始めた彼女の話では、製鐵所の周りを囲んでいる森の風景らしい。それならば分かる。草の葉に褐色の枯れ色が案外勢いよく混じる様子も、まるで近くの製鉄所に反応している地の鉄色のようで、生き生きと見えてきた。彼女はここ、かつて八幡製鉄所で栄えた鉄の町で育った人であり、鉄に対する思い入れは相当のものらしい。ちょうど「世界は鉄でできている」というコピーがテレビなどで流れているが、重松氏もかなりの部分「鉄でできている」。これからなんにでも変身していけそうなまだやわらかい鉄。魚の絵や、鉄製の小さなモニュメントが数点あったが、何より「製鐵所の風景」が彼女を力強く物語っていた。
 メインギャラリー南側には鈴木淳氏の作品。「fART(おなら)」はすごく楽しい噴火だ。くりくりとした目のあるおしりからモクモクと飛び出すおなら。気体を表現する線がきれいだが、作者はその形に昨今のきな臭い世界事情、紛争地の爆弾なども暗示しているらしい。同じ線でもベッド上の布地の皺の描写では、何か生体の存在が感じられるのはさすがだと思う。ただ、私は「On the Bed」という表題に気づくまでは、キャベツの絵かと思った。畑に鎮座する大きなキャベツは夜の暗闇の中で「明日はどんな悪童を生んでやろうか」と葉っぱ同志で密談をしているのかと思った。かなりの枚数を費やした木のシルエットの「Just One Tree」は、それぞれに文句を言っている。根を張って動けない木は文句たらたらなのかもしれない。
 アルミニウム板を使った立体は狩野信喜氏の作品。あるべきところにプロペラがあり、滑車が備わっているという確かさ。トークも聞きたかったが、欠席だった。(編註3)
 展示のスペース的にも色どりの点でも目立っていたのが服部夏子氏の作品群だ。昔のお手玉のように綿を詰めた布袋を素材に、スクエアや円形を飾り、また小さな子供の靴を飾っている。ニューヨークでは苦労したと言う彼女。しかし、彼女の声はよく響き、たとえ蹴られ傷ついても、自分が信じた道を歩んでいくという信念も厳しいニューヨークで得たと分かる。量感と肉感、華やかさ、愛らしさと鬱屈が膨れ上がっている美しさが印象的だ。  河村陽介氏の「ASTRO BOY」は納得できる作品だった。鉄腕アトムのぬいぐるみが白いブリーフを履いている。ふざけているのではない、きっとより分かりやすく存在しようとしているのだ。鉄腕アトムには白がよく似合う、それも肉体に近い白。ブリーフが出てくるのは必然かと思われる。勝手な解釈だが。
 安田尚平氏はしっかりトークを聞かせてくれた。彼の板ガラスの作品は以前、見たことがある。この日のトークでは映画『スティング』でのポール・ニューマンの話が出た。私は残念ながらこの映画を見ていないが、ポールなら着衣のままの入浴もサマになるだろう。今回の彼の作品は浴室に展示されている。シャワー文化の欧米では浴室の意味が少し私達とは違うのではないかと思うことがある。浴槽のへりに置いたガラスの灰皿にタバコという彼の作品も少し欧米よりか。タバコ一つで生活感がうわっと押し寄せた昭和と違い、令和の空気に置かれたタバコには、露骨なリアルさはない。しかし、そこに新しい生活感が静かに誕生している。
 さて、1週間後、operation tableで今度は村田峰紀氏によるパフォーマンスが行われた。手術台の上に置いた仏和辞典を、彼はボールペンでひたすら引っ掻きまくる。興奮が声帯に乗り移り、うなり声をあげる、薄い辞書の紙を引っ掻く、いや、辞書をボールペンで掘る。彼の発する声に応じて手術台に下げたランプは灯ったり消えたり。照明を落とした室内は、彼の声と明滅する明かり、そして激しく引っ掻くペンと紙の戦う音、見守る人々の熱気に包まれた。
その中で何とも楽し気にピッコ、ピッコと動いていたのが、若いお母さんにだっこされた赤ちゃんのふっくらしたあんよ2本。だんだん僧侶の声明のようにも思えてきた彼のうなり声や、室内の異様な興奮も、生まれて数か月の赤ちゃんにはちっとも不思議なものではないらしい。ちらちら彼の方へも視線を投げながら泣きもせず、赤ちゃんはすごくご機嫌だった。もしかしたら、羊水の中でこんな音を聞いたことがあるのかもしれない。 いつの間にか村田氏自身も手術台に上り、しまいには立ち上がってパフォーマンスは終わった。手術台の下にはこんもりと千切れた辞書の紙の山が出来上がっていた。

(ライター)

(編註1)絵具で描かれた植物線描も認められるので、田中奈津子さんに確認したところ、「下地と上描きがはっきりとわかれているわけではないので、染色と描画の多重奏を楽しんでもらえればいいと思っている」との回答をいただきました。
(編註2)(編註3) 初日のトークに参加できなかったアーティストからはヴィデオ・メッセージをいただき、トーク参加のアーティストの記録と同様、ホームページでご覧いただけます。





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以下はさわらびガーデンモール八幡一番街 1F休憩スペース(JR八幡駅前)の会場風景です。